【泣ける絵本】『泣いた赤鬼』おすすめ7作品の比較レビュー

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『泣いた赤おに』は、小学校の道徳の教科書にも採用されている大人から子どもまで世代を超えて愛されている絵本です

村人と仲良くなりたい心優しい赤鬼くん、友達思いでちょっと兄貴肌の青鬼くん
赤鬼くんの願いを叶えるために青鬼くんが村人に一芝居をうつが、それは自己犠牲のなにものでもない
そしてみんなの思いが満たされたときに失ったものとは…

この絵本、ほとんどの方が子どものころに読んでいるかとおもいますが、大人になってから読み返すとずいぶん印象が違います
絵本にたらればは”なし”かもしれないけど、言いたくなってしまう『泣いた赤鬼』
さまざまな感想や意見がでるこの絵本、親子でゆっくり話をしてみるとよい一冊です

わたし不覚にも
小学生に読み聞かせをした時、嗚咽をあげて泣いてしまったことがあります

読み聞かせは基本的には感情を入れず、抑揚をつける程度で読むほうが良いと言われています
なぜなら、子どもたちは物語を耳で聞き、目で絵の隅々までじっくり見ます
絵から登場人物や風景の印象を自分で感じ取るからです

また赤ちゃんや幼児には楽しませるために声色リズムをつけて読むと良いでしょう

小学生に読み聞かせをしているようす



大人も泣いてしまう絵本『泣いた赤鬼』、さまざまな出版社から刊行されています
その中で7社を比較しました
お子さまの年齢や好みにあった1冊が見つかると嬉しいです

目次

絵本『泣いた赤鬼』出版社別の比較

世界文化社 ないたあかおに 絵:岩本康之亮

ないたあかおに(ワンダーおはなし絵本)
出版社:世界文化社
文 :浜田広介 絵:岩本康之亮
初版: 2003/1/1
対象:3歳~
単行本 ‏ : ‎ 24.0×21.8cm 30ページ

原作者の浜田広介さん自身が幼いお子様向けに文章量を少なく編集した「泣いた赤鬼」です
全文版「泣いた赤鬼」と比べても良さは充分に伝わる一冊になっています
イラストレーター岩本康之亮さんのやさしい絵のタッチは、人間と仲良くしたい心やさしい赤鬼、赤鬼を心から慕う優しい青鬼全く恐ろしさを感じずに小さなお子さんでも読みすすめることができます赤鬼の望みをかなえてあげたいと思う青鬼の優しさを感じとれる作品です。最後に青鬼が去ってしまうところで「青鬼さんかわいそう」「赤鬼さんかわいそう」と、切ない思いになりますが、はじめての「ないたあかおに」は岩本康之亮さんの優しい絵でいかがでしょうか
巻末に浜田広介さんの娘さんの言葉が載っています、絵本ではことばのリズムが大切な要素であること、作者である父親の浜田広介さんの温かい人柄、この絵本ができた経緯などがかかれています
このワンダーおはなし絵本は、ひらがなで子どもでも読みやすくなっています。また言葉と言葉のブレスがわかりやすく入っているので、リズムを意識して読み聞かせをしてあげられる一冊です


【岩本康之亮 その他作品情報】


おんどりえんどうまめ
作: 宮川やすえ
絵: 岩本 康之亮
出版社: ひさかたチャイルド

ひよこ
作: チュコフスキー
絵: 岩本 康之亮
訳: 宮川やすえ
出版社: ひさかたチャイルド

ごんぎつね
作: 新美南吉
絵: 岩本 康之亮
出版社: ひさかたチャイルド


その他多数


講談社 ないたあかおに 絵:野村たかあき

ないたあかおに(講談社の名作絵本) 
文 :浜田広介 絵:野村たかあき
出版社:講談社
初版: 2013/11/5
対象:3歳~
単行本 ‏ : ‎ 270×220mm 32ページ

こちらの『ないたあかおに』は浜田広介さん生誕120年を記念し講談社が再編集した復刊です 全編ひらがなで書かれており、字が読める年齢の子に読みやすい絵本となっています
絵は、木彫・木版画工房「でくのぼう」を主宰の野村たかあきさん、鬼をテーマに数多くの作品がある方です。こちらの「ないたあかおに」、木版画の力強い線で描かれていて挿絵の迫力はどのページからもあふれています。その中で鬼の優しくて、また切ない表情の目がなんとも美しく印象的に表現されています
そして最後の場面で赤鬼はしくしくと涙を流すのですが、この絵本では赤鬼の大きながっしりした後ろ姿の絵が描かれています。その大きな背中からしくしくと泣く声が聞こえてくるようです


野村たかあき その他作品情報】


おばあちゃんのえほうまき(シリーズ他5作あり)
作・絵: 野村 たかあき
出版社: 佼成出版社

しにがみさん
作・絵: 野村 たかあき
監修: 柳家 小三治
出版社: 教育画劇

へぇこいたのだれだ?
作: 平田 昌広
絵: 野村 たかあき
出版社: くもん出版


その他多数


偕成社 泣いた赤おに 絵:梶山俊夫

泣いた赤おに
出版社:偕成社
作:浜田廣介 絵:梶山 俊夫
初版:  1993年03月
対象:小学生中学年~
単行本 ‏ : ‎ 29cm×25cm  40ページ

こちらの「泣いた赤おに」は、原作全文を編集せずにそのままの言葉でかかれています
「…、そこにすまっていたのでしょうか….」
このように今とは違った言い回しですが、感覚的に意味が理解できるものばかりです
青鬼が「何かをやりとげるには誰かが損をしたり犠牲にならなければできない」と赤鬼に語る場面では梶山俊夫さんの絵のどこかひょうひょうとした画風の中に青鬼のものがなしげな表情自己犠牲の決意が表現されています
梶山俊夫さんの背景の隅々まで丁寧な絵の中で赤鬼と青鬼の表情がダイレクトに伝わってきます
そして圧巻は最終ページの絵です。赤鬼が青鬼からの置手紙を読んでドア越しに泣くシーンで終わるのですが、次のページを開くと見開き2ぺージ全面が山の風景。そしてその左はじに赤鬼が荷物もって歩いている様子。青鬼の別れの手紙を読んで泣いた後で村の人たちが待つ家路に向かっているのか、それとも青鬼を探しに遥か彼方の旅に出たのか
読んだ人によって結末が違うようですね
この偕成社の『泣いた赤鬼』の梶山俊夫さんの絵は挿絵として文章に組み込まれているのではなく、すべての絵がページ全面を使った一枚の絵画になっているところも見ごたえのある一冊です


【梶山俊夫 その他作品情報】


やんすけとやんすけとやんすけと
作・絵:梶山 俊夫
出版社:三起商行(ミキハウス)


えんぎかつぎのだんなさん-らくご絵本-
作: 桂 文我
絵: 梶山 俊夫
出版社:福音館書店


おにもつはいけん
文: 吉田道子
絵: 梶山 俊夫
出版社: 福音館書店


その他多数


金の星社 ないた赤おに 絵:いもとようこ

ないた赤おに ~大人になっても忘れたくない いもとようこ名作絵本~
出版社:金の星社
文 :浜田広介 絵:いもとようこ
初版:  2005年05月
対象:幼児~
単行本 ‏ : ‎31.0×22.9cm 48ページ

金の星社の『ないた赤おに』は、サブタイトルにもあるように大人になってもわすれたくない絵本です。いもとようこファンとしては本棚の特等席に置きたい一冊ですね
優しさあふれた絵、表紙の赤鬼の顔からにじんだ愛らしさ切なさは、見ているだけで赤鬼がなんて語りかけているんだろうと何通りも想像してしまいます
いもとようこさんの絵はちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で描かれているそうです。具体的な技法は私にはわかりませんが、なんとも柔らかな独特の優しい描きかたです
特筆したい絵はいくつもあるのですが中でも、”人間と仲良くしたい赤鬼のために自ら青鬼が悪者をかって出ようとする場面”、相手を思いやるやりとりが続くのですが、絵は見開きいっぱいに青鬼の手がグッと赤鬼の手をつかんでいるのです。青鬼の手の力強さで感情が強烈に伝わります。すごいです
そしてもうひとつ、赤鬼が青鬼に馬なりになって頭をポカポカなぐる様子、二人が見つめ合う瞳は涙でうるんでいるようにも見えます。
どのページもいもとようこさんの優しさあふれる絵と物語の悲しさが重なり合った素晴らしい一冊です


【いもとようこ その他作品情報】


てぶくろをかいに
新美南吉 作/いもとようこ 絵
出版社: 金の星社


ずっとそばに・・・
作・絵: いもと ようこ
出版社: 岩崎書店


ごんぎつね
作:新美 南吉
絵:いもと ようこ
出版社:金の星社

その他多数

偕成社 ないたあかおに 絵:いけだ たつお

ないたあかおに
出版社: 偕成社
作: 浜田 廣介 絵: 池田 龍雄
初版: 1965年12月
対象:3・4歳から
単行本 ‏ : ‎ 31.0×22.9cm 48ページ

こちらの絵本、浜田広介さんが1933年に書いた「泣いた赤おに」の読者の反響によって1965年に初版本とされて絵本です
作者は浜田広介さんご自身が、小さな子どもでも読みやすくやさしい言葉に書き直した作品です
刊行が古いのですが読みにくさは全くなく、するすると「泣いた赤おに」の世界に入っていきました
リズムある文体は七五調にかかれている部分が多くあるのが特徴なんだと思います。美しい言葉が並んでいて、読み聞かせをする上で読み手が心地よくなる絵本です
絵の池田龍雄さんはもうお亡くなりになられているのですが、戦後を代表する前衛美術家の方で絵本の挿絵も数点されているようです
池田龍雄さんの柔らかい色合いの鬼たち、王道の昔話の風景が広がっていてなんとも落ち着きます。そして赤鬼、青鬼、村人の目と口元に注目するとその表情から言葉が浮かびあがってくるようです。たくさんの村人が登場しますがそれぞれの顔をみているだけで心情が楽しく何度も見返してしまう絵です
この絵本は1965年に刊行されて55年以上も長く読み継がれ「泣いた赤鬼」の原点の絵本だと思います


【池田龍雄 その他作品情報】


そらとぶおしろ(ギリシアむかし話)
 文:矢崎源九郎
 絵:池田龍雄
出版社:偕成社


しろいいぬ?くろいいぬ?
文: マリオン・ベルデン・クック
絵: 池田 龍雄
訳: 光吉 夏弥
出版社: 大日本図書


ムーミン谷の冬
作:トーベ・ヤンソン
訳:山室静
挿絵:池田龍雄
出版:1964年講談社刊「少年少女新世界文学全集 第27巻」


その他、ルポルタージュ絵画多数

あすなろ書房 泣いた赤おに 絵:つちだのぶこ


泣いた赤おに
出版社:あすなろ書房
作: 浜田 広介 絵: つちだのぶこ
初版:  2016年07月30日
対象:小学校中学年
単行本 ‏ : ‎ 25.7×19.7cm 48頁

こちらの「泣いた赤おに」なんともキュートな鬼の絵です。つちだのぶこさんの画風ならではですね
小さい子がこの絵本を手にとっても鬼に対して恐ろしいイメージはみじんも感じないでしょう。文章は原文にちかいので幼児にはやや難しく感じる言い回しがあるかもしれませんが、感覚的にわかるものなので読み聞かせであれば小さいお子さんでも大丈夫です
つちだのぶこさんは小学校3年生の時にこの物語に出合い、それからこの絵本をモチーフになんども描いていたそうです
子どものころから書き続けた「泣いた赤おに」が刊行となり、ずっと思い描いた作品を手掛けたお気持ちはいかばかりか。どのページも元気な可愛い赤鬼の絵で弾けてます。中でも私が大好きな場面は赤鬼が村人と仲良くになり、家に招待する場面の絵が丁寧に見開き3ページにもわたり描かれています、赤鬼の顔は長い間の思いが叶ったその嬉しさあふれる表情でいっぱいです。
そして物語の結末ですが赤鬼が青鬼の置手紙を読んで涙するところで終わるのが多いなか、最後のページをあけるとこの物語の着地点となる愛らしい絵が描かれています。「泣いた赤鬼」はさまざまな感想と解釈があって悲しいだけで終わる場合もありますが、このあすなろ書房の「泣いた赤おに」の最後のページで涙しながら笑顔になった読者もいるんだと思います


【つちだのぶこ その他作品情報】


でこちゃん
作・絵: つちだ のぶこ
出版社: PHP研究所

ぼくんちカレーライス
作・絵: つちだ のぶこ
出版社: 佼成出版社


ポッケのワンピース
出版社: 佼成出版社
出版社: 学研


その他多数

小学館 泣いた赤鬼 絵:浦沢直樹

泣いた赤鬼
出版社:小学館
作:浜田 廣介 絵: 浦沢 直樹
初版:  22011年12月
対象:小学校中学年~
単行本 ‏ : ‎ AB判/48頁

この小学館の「泣いた赤鬼」は今まで絵本に触れていなかった大人の方でも親しみをもって読める一冊かと思います
漫画家浦沢直樹さんならではの挿絵が多く場面、場面の絵が多いです。さすが漫画家の浦沢直樹さん、文章以上に絵から赤鬼、青鬼、村人の感情が伝わってくる絵本です
この『泣いた赤鬼』で読み聞かせをするなら大きな声で抑揚をつけ、迫力をもって読むとより絵とのコラボレーションが増し聞き手の子ども達に印象強くの物語が残るとおもいます。浦沢直樹さんが描く赤鬼さんの喜怒哀楽の表情は物語の中に入り込んで夢中になって読んでしまいます。
もう一つ、この「泣いた赤鬼」で私が特筆しておきたいのが、浦沢さんの描く鬼がどこか外国人を模写したようにも見えます
鬼=外国人そう考えて読むと、この物語は昔、日本になんらかの理由で来た外国人が異人種(日本人)との交流の難しさをストーリーにしているのではないかとも思えてもきます。赤鬼が仲良くなった村人を持てなす食べ物などが洋風に描かれているのも納得です。
そして最後の青鬼さんから赤鬼さんへの置手紙の場面がきます。そこからはズルいと言いたくなるくらいの涙腺崩壊の素晴しい挿絵が続きます。最高に泣ける絵本「泣いた赤おに」この本で素直に泣いちゃいましょう


【浦沢直樹 その他作品情報】

20世紀少年
作・絵: 浦沢直樹
出版社: 小学館 

YAWARA!
作・絵: 浦沢直樹
出版社: 小学館 


MONSTER
作・絵: 浦沢直樹
出版社: 小学館 


その他多数

さまざまな「泣いた赤鬼」を読んで感じたこと

今回、絵本『泣いた赤鬼』を出版社別にじっくり読んでみました。長い年月読み継がれている作品だけあって、改めて物語の素晴しさを実感しました。画風は全然違っていても、どの本からも大切な人を思う気持ち、そのために自分を犠牲にするという行動は同じで心を強く動かされ涙します
また、鬼たちのその行動は本当に正しかったのか、大切な人は本当に喜んだのか
読むたびにいくつもの気づきがある絵本です
このブログからそれぞれ刊行されている「泣いた赤鬼」をイメージしていただきお子様にぴったりの一冊を選んでいただけたら嬉しいです

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